
プラセンタとは
プラセンタはラテン語で、「胎盤」を意味します。私たち哺乳動物はその誕生にあたり、母胎と胎児の仲立ちをする胎盤のおかげで、母胎から十分な酸素と栄養を受けて健やかに発育することができるのです。
胎盤は、胎児とへその緒でつながっています。胎盤の形成は受精後約5週目から始まり、13週目頃になって完成します。胎盤がつくられる経緯を簡単に振り返ってみましょう。
まず、卵子と精子が出会って生じた受精卵が、子宮内壁に着床します。
着床した受精卵の表面からは、絨毛が無数に出て、やがて着床面の絨毛だけが成長し(他の絨毛は退化)、母体の子宮内壁と結合して、円盤状の臓器がつくられます。
これが胎盤です。


胎盤は、胎児と母体とを結びつけるとともに、両者を隔てる役割を果たします。
母体から胎児への栄養や酸素などは、母体の血液から胎盤を通って、胎児の血液に入り、逆に胎児の老廃物は、胎盤を通って母体の血液中に捨てられます。
この際、両者の血液が交じり合うことはありません。胎児側の血液は、絨毛内の胎児血管を循環し、母体の血液は絨毛間腔を満たすのみです。
また胎盤は、母体側に異常が起きた時には、胎児を保護する障壁の役目を果たします。
私たち哺乳類は、胎盤のおかげで、この世に元気に生まれることができるのです。
そして胎盤は、出産によってその役割を終了すると、後産として体外に排出されることになります。
胎児の各種臓器を代行する胎盤
受精卵は受精後1週間ぐらいで子宮内壁に着床し、器官が順次つくられ始め、受精後8週目頃には、各種器官が全て揃い、その後は急速に成長していきます。
ところで、胎盤の重要な働きとして、胎児への酸素、栄養分などの補給や、胎児の保護に加えて、各種臓器の機能を十分に備えていない胎児のために、それぞれの臓器の代わりをすることが挙げられます。
胎盤が代行する各種臓器の機能をまとめると、次のようになります。
胎児は胎盤を通じて、母体の血液から酸素を受け取ります。
胎盤は胎児の老廃物を処理し、母体の血液中に送ります。
胎盤が、病原菌や異物などの侵入を阻止する関所の機能を果たします。
胎児では、肝臓が持つべき酵素を十分に備えていないため、胎盤がその不足分を補いながら、代謝作用を行ないます。
旺盛な発育をする胎児は大量のホルモンを必要としますが、胎盤はこれらのホルモンを供給します。
胎児はアミノ酸のみをタンパク質源として利用します。胎盤で、母体の血清タンパク質を消化してアミノ酸にまで分解し、胎児に送ります。
このように、胎盤は胎児の各種臓器を代行する、"万能の臓器”といっても過言ではありません。そして、忘れてはならないのが、胎盤の持つ「調節機能」です。
例えば、胎盤には血液の凝固を防ぐ働きとともに、出血を防ぐ働きもあります。相反する作用を絶妙なバランスに調節し、共存させているのが胎盤なのです。
つまり、胎児に血液を送るために、血液の凝固を防ぐことが大事ですし、また出産の際には、母体を守るために、出血を防ぐことが大切です。
したがって、必要に応じてどちらかの働きをも果たすことができるように、調節機能を作動させているのです。
万能臓器ともいわれる胎盤だけに、各部を常にあるべき正常な姿に保とうとする、こうした調節機能が備わっているのは、生命の必然ともいえるでしょう。


